「豊臣兄弟!」第20話「本物の平蜘蛛」あらすじ・感想|秀吉、死罪寸前——久秀との決断
大河ドラマ「豊臣兄弟!」第20話「本物の平蜘蛛」を徹底解説。秀吉の死罪宣告、羽柴家の嘆願、松永久秀との談判、平蜘蛛の史実、久秀の最期の真相まで詳しく解説。…
戦場での武功より、交渉の場での機転——このドラマが小一郎(仲野太賀)の「強さ」をどこに置くかが、第5話で明確になりました。「嘘から出た実」というタイトルが示す逆説の面白さを、見事に体現した回です。
小牧山城に拠点を移した信長(小栗旬)は、織田家中の結束を図るため御前試合を開催。藤吉郎(池松壮亮)のライバルである前田利家(大東駿介)との対決に、小一郎が一計を案じる。正面からぶつかるのではなく、機転で局面を変える小一郎の智恵が早くも炸裂した。
その後、信長は兄弟に美濃攻めの鍵となる鵜沼城の調略を命じる。城主・大沢次郎左衛門(松尾諭)はこれまで誰の説得にも頑として応じなかった一筋縄ではいかない人物。武力での攻略は困難な中、小一郎は言葉と知恵を尽くして交渉に挑む。
一見「嘘」に見える策が、やがて本物の信頼と結果を生み出す。タイトルの逆説が最後まで伏線として機能した、脚本の構成力が光る第5話でした。
正面から利家に勝てないと判断した小一郎が、知恵で状況を逆転させる場面。「力で負けても、頭で勝つ」というこのドラマの主人公らしさが凝縮されたシーンです。
注目したいのは、小一郎がこの策を「ズルい手段」として自己嫌悪するのではなく、あくまで「最善の判断」として選ぶ点です。目的のために手段を選ぶ合理性——これが後年、秀吉政権の実務を担う秀長の本質でもあります。大東駿介さんが演じる利家の「こいつ、やりやがった」という表情も絶妙でした。
頑固に心を閉ざす城主に対して、小一郎が選んだのは圧力でも脅しでもなく、「相手が何を怖れているか」を見抜くことでした。
松尾諭さんが演じる大沢のかたくなな表情が、小一郎の言葉によって少しずつ崩れていく過程が見事。「調略とは相手の心を動かすこと」——これはまさに史実の秀長が得意としたとされる手法で、このシーンはその本質をドラマチックに体現していました。
タイトルの意味が最後に明かされる瞬間の鮮やかさ。交渉の過程で使われた「嘘」が、思わぬ形で本当の結果を生み出す逆転劇。
視聴者にも「えっ、そうなるの?」という驚きを与えながら、後から振り返ると「必然だった」と気づかせる脚本の妙が際立ちました。こういう「見事に伏線が回収される」瞬間こそ、毎週見続けたくなる理由です。
鵜沼城の調略が実際にあったことは史料に残っていますが、秀長が具体的にどう関わったかは不明です。史実では1564年(永禄7年)頃に信長が美濃三人衆の切り崩しを図ったとされています。
このドラマが「秀吉と秀長のコンビ」を調略の中心に据えたのは、秀長が後年「大和大納言」として領国統治と対外交渉を任された人物であることを考えれば、非常に説得力のある脚色です。
大沢次郎左衛門との交渉で、小一郎が「相手の立場で考える」ことを自然にやってのける場面に、秀長の本質が表れていました。
同情でも計算でもなく、純粋に「相手はなぜそう行動しているのか」を理解しようとする姿勢。史実でも秀長は領地の民から慕われた人物として記録されていますが、それはまさにこういう「相手の気持ちを先に考える」性質から生まれたものでしょう。
「嘘から出た実」というタイトルは、物語のテーマを端的に表しています。戦国という時代において「嘘」は手段であり、そこから生まれる「実(真実)」こそが目的。手段と目的をどう折り合わせるか——秀長という人物の複雑な倫理観を一言で示す、見事なタイトルです。また御前試合と城主調略という二つのエピソードが「嘘と真実」という共通テーマで統一されている構成も巧みでした。
このドラマの面白さは「戦わずして勝つ」瞬間にある、と改めて確信した回でした。
刀を使わずに戦況を変える——その「知恵」という武器が、戦国という暴力の時代にいかに異質で、いかに強力かを第5話は鮮やかに見せてくれます。剣が届かない距離に届く言葉の力、これこそ秀長の真の武器です。
また前田利家(大東駿介)との関係性が少しずつ描かれ始め、織田家中の人間模様が豊かになってきました。この関係が後にどう発展するかも楽しみです。
鵜沼城調略の余波が続く中、藤吉郎がある危機に巻き込まれます。第6話「兄弟の絆」では、弟が兄の命を救うために信長に直談判するという、兄弟の絆が極限で試される場面が待っています。
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